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第95回 カロテノイド発見の歴史とその健康効果

  



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□□■ 果物&健康NEWS Vol.95 ■□□
   ■   2006年3月24日(金)   ■


みなさん、こんにちは!
特集は「カロテノイド発見の歴史とその健康効果」です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp



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 ◇ くだもの健康豆知識:果物は美味しくてもカロリーは低い
 ◇ 今週のレシピ:アンズ
 ◇ カロテノイド発見の歴史とその健康効果
 ◇ 研究者の横顔:カロテノイドの研究者ポール・カーラー
 ◇ 品種紹介:アンズ「信州大実」
 ◇ 果物の歌:ふるさと
 ◇ 花便り:古河総合公園の花モモ
 ◇ 今日は何の日:檸檬忌(3月24日)
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:果物は美味しくてもカロリーは低い

 昔に比べて果物は美味しくなっていますが、それは、それぞれの果物の美味しさを構成する成分や要因がバランス良く整った新品種が現れたためです。育種に携わる人たちの長年の努力の成果です。

 果物の美味しさの秘密は、甘さだけにあるのではありません。糖と酸の比率も関係しています。酸味が少ないと甘いだけの淡泊な味となりますが、ほどよく酸味があると濃厚な味になり果物らしさが出てきます。そのため、多くの果物は、ゴボウよりカロリーが低くて美味しいのです。




□ 今週のレシピ:アンズ

 β-カロテンが豊富なあんずのレシピです。

○ スペアリブのあんず風味

材料
 あんずジャム 80g、スペアリブ(豚) 500g、醤油 50cc、酒 50cc

作り方は下記のサイトで見ることができます。
http://www.chikumashi-koshoku.jp/anzu/homemade.html#a20

○ あんずとアーモンドのオーブン焼き

材料(4人分)
 シロップ漬のあんず 8粒、生クリーム 200cc、アーモンド 16粒、三温糖 少々 (上白糖、グラニュー糖でも)

作り方は下記のサイトで見ることができます。
http://www.chikumashi-koshoku.jp/anzu/homemade.html#a15




□ カロテノイド発見の歴史とその健康効果

 果物などで見られる色とその化合物について多くの研究者が大変興味を持っていました。黄色い色素についての研究は19世紀の初めまでさかのぼることができます。黄色い色素(β-カロテン)を最初に分離したのはWackenroderで1831年のことでした。その後、他の多くのカロテノイドが、1800年代に発見され命名されました。しかし、当時はまだその分子構造は未知のままでした。

 WillstatterとMieg(1907年)によって初めてβ-カロテンの分子式がC40H56(炭素が40個、水素が56個からなる化合物)であることが明かとなりました。その分子構造はポール・カーラー(Paul Karrer, 1930-31年)によって解明されました。この研究はビタミン、プロビタミンの構造を決めた最初の仕事です。そのため、彼は1937年にノーベル化学賞を受賞しました。

 1913年McCollumは、バターや卵の黄身にネズミの成長に不可欠な成分があることを発見し、翌年 (1914年) その成分の抽出に成功しました。この成分がビタミンAです。一方、OsborneとMendel(1913年)は、黄色い色素(カロテンなど)を含む野菜がビタミンAの供給源として有効であることを示しました。

 そこで、Steenbock(1919年)は、黄色と白色のとうもろこしをネズミに食べさせたところ、白色のトウモロコシを食べたネズミにはビタミンA欠乏症が現れたのに対して、黄色いトウモロコシを食べたネズミにはビタミンAの欠乏症が現れないことを示し科学雑誌Scienceに発表しました。この実験から、彼は、黄色のトウモロコシに含まれているβ-カロテンが体内でビタミンAに変化すると考え、ビタミンに変化する物質を意味するプロビタミンという新しい概念を提案しました。

 人に対する生理作用についての様々な研究は1970-80年代に精力的に行われました。1980年代の早い時期にβ-カロテンが人の体内でおきる酸化を防止する機能があることが分かり、ガンなど生活習慣病の予防に役に立つことが見いだされました。最近では、β-カロテンだけでなく、β-クリプトキサンチンも注目されています。カロテノイドは、抗酸化力が強いため、ガン、動脈硬化、心臓病、関節炎、白内障などの生活習慣病を予防する効果があると期待されています。

 β-カロテンなどプロビタミンAは、ビタミンAの安全な供給源です。ビタミンAであるレチノールを過剰に摂取すると障害がでることが知られていますが、β-カロテンは、過剰に摂取しても身体に蓄えられ、必要に応じてビタミンAに変換されるため過剰障害が起きません。そのため、ビタミンAの半分はβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンなどから摂取するのがよいとされています。世界的に見てビタミンAの供給源の80%は果物と野菜です。果物ではミカンやアンズ、カキ、ビワなどに多く含まれています。そのため、色のついた果物を食べて健康を維持・増進しましょう。

【用語解説】
カロテノイドとは:
 カロテノイドは、植物などに多く含まれている色素で、今までに600種類以上知られています。カロテノイドは大きく分けてキサントフィルタイプとカロテンタイプとがあります。この中で、プロビタミンAとして働くのはβ-カロテン、α-カロテン、β-クリプトキサンチンです。カロテノイドは、ドイツ語に由来するカロチノイドと言い表されることもあります。




□ 研究者の横顔:カロテノイドの研究者ポール・カーラー

 ポール・カーラー(Paul Karrer)氏は、1889年4月21日にモスクワで生まれました。彼の両親がスイス人だったため1892年にスイスに戻りました。チューリッヒ大学で化学を専攻し1911年に博士号が授与されました。研究のアシスタントをした後、1912年にフランクフルトで職を得てドイツに移りました。1919年には、スイスに戻りチューリッヒ大学化学研究所の教授になりました。

 彼の最も重要な研究は植物色素、特に黄色いカロテノイドについての研究です。1930年に彼は、β-カロテンの正確な分子構造を明らかにしました。この仕事は、ビタミンあるいはプロビタミンと呼ばれる化合物における世界で最初の構造決定で、この業績により1937年にーベル化学賞が授与されました。1930年に書かれた「Lehrbuch der Organischen Chemie(有機化学原典)」は英語、イタリア語、スペイン語、フランス語、ポーランド語、日本語に翻訳され多くの化学者に読まれました。

 カーラーは1914年にHelena Froelichと結婚し、2人の息子がいます。1971年6月18日にカーラーは亡くなりました。




□ 品種紹介:アンズ「信州大実」

 長野県果樹試験場により育成され1980年に登録された「信州大実(しんしゅうおおみ)」は、「新潟大実(にいがたおおみ)」と「アーリーオレンジ」を交配してできた品種です。

 育成地(長野県須坂市)では7月中旬に成熟する晩生種で、結実性は極めて良く、果実は80〜90gと大きいのが特徴です。甘味は中程度(屈折糖度計示度で10%前後)、酸度はpH3.2程度です。

「信州大実」の果実の写真などは下記のサイトで見られます。
http://www.pref.aichi.jp/shokuhinkensa/kajitu/
a_kakuka/a01_anzu/sonota.html





□ 果物の歌:ふるさと

 山口洋子作詞、平尾昌晃作曲の「ふるさと」は、五木ひろしさんの1973年のヒット曲で、その年の紅白歌合戦でも歌われました。人々の故郷への思いの強さを感じさせる曲です。3番で「隣りの村でも いまごろは 杏(アンズ)の花の まっさかり」と歌われています。

 歌詞と演奏は下記のサイトです。クリックすると演奏が始まりますので、演奏がじゃまな人は消音してからクリックしてください。
http://www.mahoroba.ne.jp/~gonbe007/hog/
shouka/furusato_yoko.html





□ 花便り:古河総合公園の花モモ

 茨城県古河市総合公園内には「矢口」、「源平」、「菊桃」など2,000本の桃の花が咲き、桃源郷のようになるそうです。花の見頃は3月中旬〜4月中旬です。古河総合公園は、文化景観保護と管理に関するユネスコ・メリナ・メルクーリ国際賞を2003年に受賞しています。問合せ先は公園管理事務所0280-47-1129です。

古河総合公園の花モモの写真は下記のサイトで見られます。
http://www.city.koga.ibaraki.jp/park/kouen.photo/
hanamomo/hanamomo.htm


メリナ・メルクーリ国際賞受賞のサイトは下記です。
http://www.city.ibaraki-koga.lg.jp/park/jyusho/index.htm




□ 今日は何の日:檸檬忌(3月24日)

 作家梶井基次郎は、1932(昭和7)年3月24日に亡くなりました。そのため、命日であるこの日は、代表作である『檸檬(れもん)』にちなみ檸檬忌と呼ばれています。1925年1月、同人誌『青空』の創刊号に発表された「檸檬」の一節から。

 『いったい私はあの檸檬が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、それからあの丈(たけ)の詰まった紡錘形の恰好(かっこう)も。――結局私はそれを一つだけ買うことにした。』




☆ 編集部より ☆

 NHK総合の「語ろう農業にかける夢」(3月18日AM10:05-11:54)はとても面白かった。その中で、糸井重里氏は、「21世紀、農業は成長産業で第四次産業である」と言っていました。農業は一次産業として位置づけられていますが、三次産業(情報産業)でもあることから、1+3=4次産業なのだとのことです。農業の夢を語るのにふさわしいキャッチフレーズと思いました。王ジャパンのように苦しい時を乗り越えて、果樹農業の担い手が増え、未来が拓かれることを期待しています。また、そのお手伝いができればと思っています。(tnk)




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