ほぼ週刊メールマガジン「果物&健康NEWS」

第48回 糖尿病と食物繊維



  

      
□□■ 果物&健康NEWS Vol.48 ■□□
   ■  2005年3月11日(金)   ■


みなさん、こんにちは!
今週の特集は糖尿病と食物繊維です。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp



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 ◇ 糖尿病と食物繊維
 ◇ 読者からの質問:前立腺に係わる病気予防について
 ◇ 食育コーナー
 ◇ 今週のキッズレシピ
 ◇ 編集部より



□ 糖尿病と食物繊維

 糖尿病は症状のない時期が長いため、治療しないまま放置されるケースが多くみられます。しかし、糖尿病は動脈硬化の要因となるだけでなく、悪化すると網膜症、神経障害、腎症などの合併症も引き起こします。

 糖尿病の食事療法では、血糖のコントロールが基本で、必要なエネルギーと栄養素を過不足なくとり、過剰な摂取をさけることが必要です。そのため、毎日、いろいろな食品をとり混ぜて、それぞれ適正な量を食べることが大切です。特に、エネルギー量が少なく、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富な食品を積極的に食べることが推奨されています。

 かって、食物繊維は人の消化酵素では分解されず、栄養素の吸収を阻害する非栄養素として排除され、精製して取り除かれてきましたが、最近の研究から食物繊維は、糖尿病やガン、虚血性心疾患、高血圧などあらゆる生活習慣病と関係が深いことが明らかになりました。食物繊維を多く含む食品は、胃の中に滞留する時間が長く、小腸上部での吸収が遅れ急激な血糖の上昇を防ぎます。また、食物繊維は腸内で脂肪を吸収して排泄します。

 最近、アメリカで糖尿病発症と摂取食品との関係を調査した結果が発表され、食物繊維の摂取量が2型糖尿病の発症率に影響することが分かりました。ハーバード大学のグループは、1909年から1997年までの各食品の消費量と糖尿病の発病率とを比較した結果、摂取カロリーが増大するにつれて糖尿病も増加していくことを明らかにしました。

 この結果は、肥満が糖尿病のリスクを高めるという考えと一致しています。さらに、この報告では食物繊維の摂取量が少なく、コーンシラップの摂取量が多いほど糖尿病の発症するリスクが高くなることが示されました。コーンシラップなどの精白炭水化物を多く含む食品を摂取すると血糖値が上昇するため、膵臓はインスリンをどんどん作らなくてはならなくなります。こうした状態が長く続くと、体内組織は過剰なインスリンに抵抗性を示すようになり、膵臓細胞は疲れきって糖尿病が発症すると著者らは推定しています。

 一方、我が国の糖尿病実態調査(H10)では、糖尿病が強く疑われる人の28.0%、糖尿病の可能性を否定できない人の26.9%が肥満です。食物繊維を多く含む食品はカロリーが少ないため、肥満の防止にも役立ちます。そのため、現在、糖尿病予防のため、栄養学者の多くは、精製された炭水化物を避け、代わりに食物繊維の多い全粒穀物や果物や野菜の摂取を奨励しています。

【用語解説】コーンシラップとは、デンプンを分解してできた糖液で、デンプンの原料が主にトウモロコシデンプンであることからコーンシラップといい、主に甘味料として利用されています。

【文献】Gross, L.S. et al. (2004) Increased consumption of refined carbohydrates and the epidemic of type 2 diabetes in the United States: an ecologic assessment. Am. J. Clin. Nutr., 79: 774-779.




□ 読者からの質問:前立腺に係わる病気予防について

 「果物&健康NEWS」を毎回拝見いたしております。とても役に立つ情報が掲載されており、いつも楽しみにしているところです。さて、今回取り上げてもらいたいテーマは、前立腺に関係する病気予防についてです。(福島県:HS)

▽ ご愛読ありがとうございます。男性特有の臓器である前立腺に係わる代表的な疾病は、前立腺肥大症と前立腺がんです。前立腺肥大発症の危険因子についての疫学調査が行われていますが、今のところ、食事、喫煙、婚姻歴、性活動などとの因果関係は明らかではありません。一般に深酒、刺激の強い香辛料の摂取などが悪影響を及ぼすと言われています。

 前立腺がんは前立腺の外腺から発生し、初めは米粒ほどの大きさですが、次第に増大して精のうや膀胱、尿管へと病変が広がっていきます。前立腺がんの発症年齢の中心は、60歳以上の高齢者です。アメリカでは前立腺がんの発症が多いのですが、日本や中国では、それほど多くはありません。しかし、日本からアメリカに移住した人を調べると、前立腺がんの発症率が増加していました。そのため、前立腺がんの発症には食生活が関係していると考えられています。疫学調査の結果から、脂肪の摂取量が多い人ほどかかりやすく、ビタミンE(α−トコフェロール)など抗酸化成分を多く摂取している人はかかりにくいことが分かってきました。そのため、他のがんと同様に果物と野菜の摂取を中心とした栄養バランスの良い食事が推奨されています。

 また、前立腺がんは前立腺外腺が発生源で、内腺から発生する前立腺肥大症とは性質の違う病気です。




□ 食育コーナー

 果物と野菜の摂取で健康的な食生活をサポートする運動を進めているイオンは、食育運動の一環として食育体験学習会を開催しています。小学生2〜5年生(34名)を対象にした体験学習のレポートは、今後の食育運動の参考になります。

1時間目(10分)楽しくお勉強
 食バランスの基礎となる「フードガイドピラミッド」について。

2時間目(15分)色別お買い物ゲーム
 実際に売場に出て、各チーム別に決められた色や地元の野菜・果物を探す。

3時間目(30分)お料理体験〜試食
 地元でとれる野菜を使い、子供たちの手で料理。この日のメニューはどんぶりサラダ。包丁は使わず全部手でちぎる。

4時間目(10分)今日のおさらい
 最後に野菜クイズで今日の復習。毎日何気なく食べている野菜や果物は、いろいろな人の手がかかって食卓に運ばれていることも勉強。

 見学のお母様方も子供達といっしょに勉強できて楽しかったとのことです。
 http://www.aeon.jp/with/life/shokuiku/study/001.html




□ 今週のキッズレシピ

 今週は、日本医師会が提供する「おもしろクッキング、フルーツが主役」です。キッズレシピは次の4品です。子供たちと一緒に作ってみましょう。

 @フルフル!ひえひえ!ゼリー、Aバナナンフローズンヨーグルト、Bミルクスープとやきりんご、Cフル〜ッチョ!

 作り方と写真は下記のサイトで
 http://www.med.or.jp/kids/cooking/D.html




☆ 編集部より ☆

 寒暖まだ定まらぬ今日この頃ですが、梅や桜の花便りが聞かれます。果樹研究所(つくば)の圃場にも、様々な品種の梅の花がたくさん咲いています。(tnk)

 今週半ばから少しずつ暖かくなりはじめ、今年も見事な桜の花を見られるが楽しみです。また、新年度に入ると、びわ、さくらんぼ、もも等旬の果物をいただけるのが、まちどおしいものです。(N)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。
 無断転載は、引用を含めて、お断りします。
 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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