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第211回 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その3

  



■□ 果物&健康N8WS Vol.211
□■  2008年8月22日(金)


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その3」です。
メルマガをゆっくりとお楽しみください。
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毎日くだもの200グラム以上食べましょう!
公式ホームページは http://www.kudamono200.or.jp

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 ◇ 果物の小話:ザクロ(石榴、安石榴)の雑学−その2
 ◇ 今週のレシピ:ブドウ
 ◇ 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その3
 ◇ くだもの健康豆知識:白ワインと赤ワイン
 ◇ 品種紹介:ワイン用ブドウ「サンセミヨン」
 ◇ 果物おもしろ記録:世界一高い場所にあるワインセラー
 ◇ 科学ニュース:枝分かれ制御ホルモンの発見
 ◇ 文学の中の果物:西郷隆盛(芥川龍之介)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ 果物の小話:ザクロ(石榴、安石榴)の雑学−その2

 「安石榴(あんせきりゅう)」という名は、安石は安息、榴は瘤(こぶ)で、即ち“安息国(イランの酋長アルサケスが建国した国で、BC247〜226)から伝わった瘤のような実がなる木”という意味です。石榴は安石榴の略です。和名のザクロは、漢名「石榴」の音が転化したものとされています。

 果実の先端には、裂した円筒状のガク(宿存ガク)が残ります。3000年前にユダヤのソロモン王は、ザクロの果樹園を開いたといわれており、ソロモン王は果実のガクを見て王冠を思いつき、以降王位の象徴として、この形の王冠が継承されています。一方、ザクロは民主主義の表象とされています。これは、王冠はガクで廃棄部分にすぎず、中にある多数の種子が可食部分であり、前者が不要な王で、後者が大切な民衆であるという意味です。

 ザクロは種子が多いので、古代ギリシア・ローマでは豊穣の象徴として、中国では子孫繁栄のしるしとされ、結婚式の祝宴に供されています。

 わが国でザクロが果樹として発達しなかった裏に、鬼子母神信仰があったように思われます。インドにおいて、鬼子母は邪悪で他人の子を殺し食べていましたが、仏にさとされ帰依し、その後、産生と保育の神となりました。仏は“もし人の肉を食べたい時は、この実を食べなさい”とザクロの果実を与えたと伝えられています。この伝説から、ザクロの果実は人肉の味がするという誤った風評が広まったようです。反対に、茨城県では子供をザクロの木の下で遊ばせると、疳の虫が封じられるという言い伝えや、中国と同じくザクロを植えると家が栄え、子宝に恵まれる吉木とする地域もあります。

 なお、ザクロは果実が熟すと口を開けることから、馬鹿の隠語として用いられています。 (間苧谷)




□ 今週のレシピ:ブドウ

○ チキンとブロッコリー、赤ぶどうのサラダ

材料 (4人分)
 ブドウ 100g、鶏肉 200g、ブロッコリー 2房、ひまわりの種 50gなど

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/recipe/528226

○ りんご・みかん・ぶどうジャムのジュース

材料 (コップ4杯分)
 リンゴ 2個、ミカン 2個、ブドウジャム 大スプーン1杯くらい

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/recipe/528594

○ ぶどうとアマレットのカクテル

材料 (1人分)
 ブドウ(できれば「巨峰」) 100g、アマレット 20cc、氷 7-8個

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/recipe/479568




□ 果物摂取と2型糖尿病予防の歴史−その3

○ 果物に含まれている糖分(ブドウ糖、果糖、ショ糖など)

 20世紀には、「果物などに含まれている糖類、とくに、ショ糖や果糖は、肥満や糖尿病などの原因となる」とされていました。そのため、果物は体によくないと記述されることもありました。しかし、1986年、FDA(アメリカ食品医薬品局)は、食品から供給される甘くて栄養になる糖類(ショ糖、果糖、ブドウ糖など)に関する1,000以上の文献を再検討し、糖類の健康面における評価を行い、一般に言われている疾病(肥満、糖尿病、冠動脈心臓病、高血圧など)については、糖が直接的な原因であるという明確な証拠はないと結論づけました(文献1)。

 この報告は、ほぼ百年間、信じられてきた糖類に対する通説を覆す報告であったことから、世界の医師や研究者に衝撃を与えました。そこで、FDAの報告は正しいかどうかについてFAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保健機関)の両機関の専門家が合同して再検討を行いました。

 その結果を1997年5月に以下のように報告しました。「糖類の摂取は肥満を促進する」という考えは誤りであり、ショ糖や他の糖類が生活習慣病に直接結びつくことはないとし、FDA報告の結論を支持しました(文献2)。

 また、果物は果糖を含むため中性脂肪が増えるとされていましたが、農研機構果樹研究所の田中らは、果物の中では比較的果糖を多く含むリンゴと血液中の中性脂肪の増減との関係についてヒト介入研究を行いました(文献3)。研究では、リンゴを1日当たり1個半から2個(平均420g)を3週間摂取してもらったところ、摂取する前と比べて中性脂肪値が統計的に有意に21%減少しました。この結果は、よく言われていた、「果物は、果糖が多いので中性脂肪を増やす」とする説を覆す結果です。また、この結論は、果物と野菜を多く摂取するDASH食の研究結果(文献4)などからも裏付けられています。

【文献】
1) Glinsmann, W.H. et al.: Evaluation of health aspects of sugars contained in carbohydrate sweeteners. Report of Sugars Task Force, 1986. J. Nutr. , 116: S1-S216. (1986)

2) FAO/WHO Expert Consultation: Carbohydrates in human nutrition. FAO Food and Nutrition Paper No 66. 1998, FAO Rome.

3) 間苧谷徹・田中敬一.くだもののはたらき-改訂版-.日園連.
東京.(2005)

4) Azadbakht, L. et al.: Beneficial effects of a Dietary Approaches to Stop Hypertension eating plan on features of the metabolic syndrome. Diabetes Care, 28: 2823-2831. (2005)




□ くだもの健康豆知識:白ワインと赤ワイン

 ワイン(wine)には、赤ワイン、白ワインなどがあります。白ワイン(white wine / vins blanc:フランス語)は、発酵に果汁のみを使用します。白ワインは一般的に魚料理に合うとされています。

 赤ワイン(red wine / vins rouge:フランス語)は、果実全部を原料としてアルコール発酵させます。発酵の過程で、果皮に含まれているポリフェノール(アントシアニンやタンニンなど)が抽出されます。タンニンには渋みがあります。赤ワインは一般的に肉料理に合うとされています。

 ワインは瓶に詰められた後でも熟成が進み、風味が変化します。
熟成期間は長いものになると50年以上のものもあります。




□ 品種紹介:ワイン用ブドウ「サンセミヨン」

 「サンセミヨン」は、「笛吹(ふえふき)」と「グロー・セミヨン」を交配して育成された白ワイン用の醸造専用品種です。果実の糖度は20〜21%程度と高く、酸度は育成地で0.7%前後ですが、冷涼地ではやや酸抜けが遅くなります。ワインの品質は「甲州」より優れています。香りが華やかで、味のバランスが良く、フルーティでボディがあります。熟期は育成地(山梨市)では8月下旬〜9月上旬です。

「サンセミヨン」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://www.fruit.affrc.go.jp/kajunoheya/
ikuseihinsyu/data/hinsyu/pr-sunsemillon.html





□ 果物おもしろ記録:世界一高い場所にあるワインセラー

 カナダ・トロントにあるCNタワー(Canadian National Tower)は通信と観光用の塔です。高さは553.33メートル(1815.39フィート)で、開業時(1976年)は世界一でした。

 このタワーには4つの展望台がありますが、上から二番目(351m)には高級レストラン『360』があり、そこにはギネスで認定された世界で一番高い場所にあるワインセラー(貯蔵庫)があります。
このワイン・セラーは湿度65%、華氏55度(約12.8℃)に保たれています。

 このレストラン360は、72分で床が一周します。ワインを飲みながら、オンタリオ湖と、60キロ先のナイアガラの滝を見ることも出来ます。

CNタワーは下記のサイトで見られます。
http://www.cntower.ca/portal/

ワインセラーがギネスに記載されたことを記念して。
http://www.cntower.ca/portal/SmartDefault.aspx?at=1516




□ 科学ニュース:枝分かれ制御ホルモンの発見

 日本のグループ(文献1)とフランスのグループ(文献2)が別々に、植物の枝分かれを制御する新しい植物ホルモンを発見し、科学雑誌Natureのオンライン版に同時に発表しました。

 枝分かれの数は、イネでは少ないと収穫量が少なく、多いと品質が悪くなることが知られています。また、他の穀物や果樹などでも枝分れの程度は収穫量や品質に影響することが知られています。

 植物は、茎の先端の芽が伸びます(頂芽優勢)一方、わき芽の成長は抑えられます。この現象について、今までは植物ホルモンであ
るオーキシンとサイトカイニンの二つの物質によって制御されていると考えられてきました。しかし、枝分かれが多いイネの突然変異体の研究から、今までとは異なる新しい別のホルモンの存在が予測されていました。

 そこで、日本とフランスの研究チームは、イネやエンドウの突然変異体を研究し、根から分泌される「ストリゴラクトン(Strigolactone)」と呼ばれる物質を単離しました。この物質は、枝分かれを抑えるホルモンです。

 「ストリゴラクトン」は、農作物に寄生し養分を奪う雑草(根寄生雑草)を呼び寄せる働きが知られていました。

【文献】
1) Umehara, M. et al.: Inhibition of shoot branching by new terpenoid plant hormones. Nature, Online Aug. 10, (2008)
[doi: 10.1038/nature07272]

2) Gomez-Roldan, V. et al.: Strigolactone inhibition of shoot branching. Nature, Online Aug. 10, (2008) [doi: 10.1038/nature07271]




□ 文学の中の果物:西郷隆盛(芥川龍之介)

 老紳士はこう云って、頸(くび)を後(うしろ)へ反(そ)らせながら、大きな声を出して笑い出した。もう大分(だいぶ)酔(よい)がまわっているのであろう。本間さんは返事をしずに、ただにやにやほほ笑みながら、その間に相手の身のまわりを注意深く観察した。老紳士は低い折襟に、黒いネクタイをして、所々すりきれたチョッキの胸に太い時計の銀鎖(ぎんぐさり)を、物々しくぶらさげている。が、この服装のみすぼらしいのは、決して貧乏でそうしているのではないらしい。その証拠には襟でもシャツの袖口でも、皆新しい白い色を、つめたく肉の上へ硬(こわ)ばらしている。恐らく学者とか何とか云う階級に属する人なので、完(まった)く身なりなどには無頓着なのであろう。
「オールマナック・メエカア。正にそれにちがいない。いや僕の考える所では、それさえ甚だ疑問ですね。しかしそんな事は、どうでもよろしい。それより君の特に研究しようとしているのは、何ですか。」
「維新史です。」
「すると卒業論文の題目も、やはりその範囲内にある訳ですね。」

 本間さんは何だか、口頭試験でもうけているような心もちになった。この相手の口吻(こうふん)には、妙に人を追窮するような所があって、それが結局自分をとんでもない所へ陥れそうな予感が、この時ぼんやりながらしたからである。そこで本間さんは思い出したように、白葡萄酒の杯をとりあげながら、わざと簡単に「西南(せいなん)戦争を問題にするつもりです」と、こう答えた。

 すると老紳士は、自分も急に口ざみしくなったと見えて、体を半分後(うしろ)の方へ(ね)じまげると、怒鳴りつけるような声を出して、「おい、ウイスキイを一杯」と命令した。そうしてそれが来るのを待つまでもなく、本間さんの方へ向き直って、鼻眼鏡の後に一種の嘲笑の色を浮べながら、こんな事をしゃべり出した。「西南戦争ですか。それは面白い。僕も叔父があの時賊軍に加わって、討死をしたから、そんな興味で少しは事実の穿鑿(せんさく)をやって見た事がある。君はどう云う史料に従って、研究されるか、知らないが、あの戦争については随分誤伝が沢山あって、しかもその誤伝がまた立派に正確な史料で通っています。だから余程史料の取捨を慎(つつし)まないと、思いもよらない誤謬を犯すような事になる。君も第一に先(まず)、そこへ気をつけた方が好(い)いでしょう。」

 本間さんは向うの態度や口ぶりから推して、どうもこの忠告も感謝して然る可きものか、どうか判然しないような気がしたから、白葡萄酒を嘗(な)め嘗め、「ええ」とか何とか、至極曖昧(あいまい)な返事をした。が、老紳士は少しも、こっちの返事などには、注意しない。折からウェエタアが持って来たウイスキイで、ちょいと喉(のど)を沾(うるお)すと、ポケットから瀬戸物のパイプを出して、それへ煙草をつめながら、
「もっとも気をつけても、あぶないかも知れない。こう申すと失礼のようだが、それほどあの戦争の史料には、怪しいものが、多いのですね。」
「そうでしょうか。」



芥川龍之介(あくたがわ りゅうのすけ)
 1892(明治25)年3月1日-1927(昭和2)年7月24日)。号は澄江堂主人、俳号は我鬼。作品の多くは短編で、「芋粥」「藪の中」「地獄変」「歯車」などがあり、「今昔物語集」、「宇治拾遺物語」などの古典から題材をとったものが多くある。




□ 今週の果物

 今週は高松市の青果物市場へ入荷している果物について紹介します。地元香川産はミカン、モモ、ブドウ「デラウエア」などが入荷しています。

 ミカンは高知、香川産、リンゴは、長野産の「つがる」、青森産「ジョナゴールド」などです。

 ニホンナシは鳥取、徳島産の「幸水」、徳島産の「豊水」、鳥取産の「二十世紀」など、モモは長野、香川産、スモモは和歌山、長野産です。ブドウは香川、長野産の「デラウェア」、鳥取、熊本、長野産の「巨峰」などです。

 イチゴは徳島産、メロンは高知、静岡産の温室メロンなど、スイカは青森、山形産です。 




□ 今日のフォト

 お盆が過ぎナシの美味しい季節となりました。農研機構果樹研究所の圃場のナシも大きくなってきています。
 圃場では、ミンミンゼミや、ツクツクボウシが鳴いています。夏が終わり秋が始まっています。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News55.html
  (掲載は次号まで)





☆ 編集部より ☆

 さすがの暑かった夏も峠を越したようです。リンゴ「つがる」の出荷が始まっています。今週の火曜日には、すごい雷で停電してしまいました。でも幸いに停電の1分前にコンピュータを止めていたのでファイルが飛ぶこともなく、滑り込みセーフでした。(tnk)

 今週の頭におばからモモが2箱送られてきました。私一人で毎朝1個独占していますが、それでも傷む前に食べきれるでしょうか。うれしい悲鳴をあげています。(KT)




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