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第190回 ファイトケミカルとは

  


□□■ 果物&健康NEWS Vol.190 ■□□
  ■  2008年3月28日(金)  ■


みなさん、こんにちは。お元気ですか。
特集は「ファイトケミカルとは」です。
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 ◇ くだもの健康豆知識:ビワ
 ◇ 今週のレシピ:ビワ
 ◇ ファイトケミカルとは
 ◇ 品種紹介:ビワ「房姫」
 ◇ 文献紹介:レスベラトロールは糖尿病の合併症の予防に有効
 ◇ 文学の中の果物:南予枇杷行(河東碧梧桐)
 ◇ 今週の果物
 ◇ 美味しいイチゴの選び方・食べ方
 ◇ 今日のフォト
 ◇ 編集部より



□ くだもの健康豆知識:ビワ

 ビワは、バラ科ビワ属の常緑果樹です。露地では、11月〜翌年の2月までの間に開花し、5〜6月に成熟します。果実は黄白色から橙色で、果実重は30g〜80gです。通常4〜8個の種を含んでいます。

 ビワには大きな種があるので食べる部分が少ないと思っていませんか。決してそんなことはありません。果肉の割合は65%〜70%でウンシュウミカンと同じくらいです。

 江戸時代、京都や江戸では毛を除いて乾燥させたビワの葉と木香、桂皮などを配合して煎じる「枇杷葉湯」が売られていました。暑気あたり、食中毒、腸カタルの予防に効果があると伝えられています。




□ 今週のレシピ:ビワ

○ びわのコンポート

材料
 びわ 16個(大きめ)、砂糖 20g、はちみつ 50g、水 300g

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/mykitchen/recipe/392184/

○ びわ寒天

材料
 びわコンポートの実部分 200g、粉寒天 4g、牛乳 400cc、砂糖 70g、白ワイン 50cc

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/mykitchen/recipe/398987/

○ びわくず玉

材料(4個分)
 本くず粉 20グラム、水 80cc、砂糖 大さじ4杯、塩 少々、びわの缶詰 適量

作り方と出来上がりの写真は下記のサイトです。
http://cookpad.com/caren/recipe/165294/




□ ファイトケミカルとは

 ファイトケミカル(フィトケミカル:phytochemical)とは植物由来の化合物の総称です。ファイトケミカルの「ファイト(phyto)」はギリシャ語で植物のことで、「ケミカル(chemical)」は化合物のことです。ファイトケミカルの用語は、果物や野菜に含まれているポリフェノールに対して使われることが多いようですが、テルペノイドなどもファイトケミカルです。

 20世紀後半から始まった生活習慣病予防の研究からファイトケミカルはヒトの健康の維持・増進に不可欠な成分であることが明らかとなってきました。しかし、ビタミンと異なり、ある特定成分が必須というわけではありません。この点について混乱があるようなのでビタミンと比較しながら違いを説明します。

 ビタミンとは、ヒトの体内で合成できないか、出来ても微量であり、ヒトの生存・生育に必須な成分で、不足すると欠乏症がおきます。例えば、ビタミンCが不足すると壊血病となり、他の成分ではビタミンCの代替えはできません。

 以前は、ビタミン不足による欠乏症を防ぐために1日当たりの所要量が定められていました。ところが、医・科学の進歩により、ビタミンは健康の維持・増進のためにも必要であることが明らかとなり、現在ではこうした観点から所要量が定められています。ビタミンCの1日当たりの所要量は50mgから100mgに引き上げられました。

 ファイトケミカルは、ヒトの健康の維持・増進に必須ですがビタミンとは異なり、ある特定成分の摂取がなくても欠乏症が起きることはありません。その理由として、他のファイトケミカル成分が代替できるためと考えられています。

 ファイトケミカルの代表的な成分で、ブドウの皮などに含まれているレスベラトロールでそのことをみてみましょう。

 長寿と関係するテロメアDNAが短くなると寿命が短くなることからテロメアDNAが短くなるのを抑制すれば寿命が延びると考えられていました。

 アメリカ・ハーバード大学医学部の研究チームは、ブドウに含まれているレスベラトロールが、テロメアDNAが短くなるのを抑制することを発見しました(文献)。レスベラトロールを酵母に作用させたところ寿命が70%伸びたと報告しています

 同時に行われた他のポリフェノール成分にも寿命延長効果が認められました。例えば、ブテイン(Butein)はレスベラトロールの約60%、リンゴに多く含まれているケルセチン(Quercetin)は約35%の抑制効果が認められました。

 このことを言い換えると、レスベラトロールの摂取がなくてもリンゴを多く摂取していれば寿命が延びることを示しています。そのため、フルーツ&ベジー・モア・マター(Fruits & Veggies More Matters:旧称5 A DAY)では、緑色、黄色/オレンジ、赤色、青/紫色など、色々な果物や野菜を食べることを推奨しています。

【文献】
Howitz, K.T. et al.; Small molecule activators of sirtuins extend Saccharomyces cerevisiae lifespan. Nature. 425: 191-196. (2003) [doi: 10.1038/nature01960]




□ 品種紹介:ビワ「房姫」

 「房姫(ふさひめ)」は、楠(くすのき)と津雲(つくも)を交雑して出来た品種です。比較的早熟の大果で、外観は赤みを帯びて美しく、しかも糖度が高く、酸が低い上に果肉が軟らかいので、食べると果汁に富み、さわやかな甘味を感じるのが特徴です。果実は短卵形で、1果平均重が75g〜85gで「大房」とほぼ同じ大果です。

「房姫」の果実の写真は下記のサイトで見られます。
http://fruit.naro.affrc.go.jp/kajunoheya/
ikuseihinsyu/data/hinsyu/pr-fusahime.html





□ 文献紹介:レスベラトロールは糖尿病の合併症の予防に有効

 イギリスの研究チームは、ブドウ果皮に含まれているレスベラトロールが糖尿病の合併症を予防すると発表しました。

 糖尿病で血糖値が上昇すると血管細胞内にあるミトコンドリアが損傷し、そのため、心疾患や網膜症、腎不全などの糖尿病の合併症が発症すると考えられています。ウシの大動脈血管内皮細胞を用いた実験から、レスベラトロールはミトコンドリアを保護する酵素の産生を促し、有害な活性酸素を抑えることが分かりました。

 このことから研究者らは、レスベラトロールはミトコンドリアの損傷を予防することを通じて糖尿病の合併症を予防できると述べています。

【文献】
Lu, C. et al.: Resveratrol blocks high glucose-induced mitochondrial reactive oxygen species production in bovine aortic endothelial cells: role of phase 2 enzyme induction? Diabet. Obesity Metabo.,10: 347-349, (2008) [doi: 10.1111/j.1463-1326.2008.00866.x]




□ 文学の中の果物:南予枇杷行(河東碧梧桐)

 中山にも「盛景寺」がある。勤王の武将河野盛景の創建、今は臨済宗である。現住僧は私の回縁者である。玉井町長を始め、数氏と共にその招宴に列した。

 食後一かごの枇杷が座右に置かれる。この辺は伊予の名物唐川(からかわ)枇杷の本場である。唐川枇杷も、長崎種子を根接ぎしで、播種改良に没頭してゐるので、土地の特有の影は地を掃らつて去らうとしてゐる。この枇杷は豊満な肉づきを思はしめる改良種のそれとは全く別趣だ。小粒で青みを帯びてゐる。産毛の手につくのすらが、古い幼な馴染に出会つた、懐旧の情をそゝる。ほのかに残つてゐる酸味は、今もぎたてのフレッシュを裏書きするのである。食ふに飽くことを知らぬ。南予枇杷行の感、殊にその第一日といふので深い。前途に尚黄累々たる、手取るに任せ足踏むに委する、甘潤満腹の地をさへ想見せしめる。

 この枇杷は、寺内土着の古木の産であるといふ。創建者盛景の唯一の遺跡とも見るべき枇杷風景か。



河東碧梧桐(かわひがし へきごとう)
 1873年(明治6年)2月26日-1937年(昭和12年)2月1日)。愛媛県生まれ。本名は秉五郎(へいごろう)。正岡子規に野球を教わったことがきっかけで、同級生の高浜虚子を誘い子規より俳句を学ぶ。従来の五七五調の形にとらわれない新傾向俳句や随筆を執筆。




□ 今週の果物

 リンゴ(「ふじ」、「王林」)は堅調です。終盤にさしかかったみかんや、いよかん、ポンカン、はっさく、デコポン、「清見」、「はるみ」が好評です。
 イチゴは色々な品種(「女峰」、「あまおう」、「さがほのか」、「さちのか」)が揃い好調です。キウイフルーツや干し柿のほか
ビワやスイカも出回り始めました。

生鮮食料品のマーケット・レポート(3月21日発行)は下記です。
http://www.maff.go.jp/toukei/sokuhou/data/
market2008-03-2/market2008-03-2.htm





□ 美味しいイチゴの選び方・食べ方

 新鮮なイチゴはへたが濃い緑色で、ヘタの周りが白くなく、果実全体が赤に着色し、つぶつぶが立っていて、ツヤがあるものです。貯蔵性はあまりないので食べたい量を買って、早めにお食べください。




□ 今日のフォト

 暖かくなり、新しい品種を作り出すための交配作業が急ピッチで進められています。
 つぼみのうちに、雌しべだけを残し、袋をかけます。この作業が早すぎると雌しべが成熟せず落ちてしまいます。しばらくして、雌しべが成熟した頃を見計らって、袋を開け、目的の花粉を交配し、もう一度袋を閉じます

 育種の醍醐味は、新しい品種育成のための交配親の選定にあります。写真は、花が咲いているように見える交配袋と開花した花、交配作業用脚立です。

http://www.kudamononet.com/kkr/snapshot/KK-News37.html
  (掲載は次号まで)






  ■ お花見に、果物をお忘れなく


☆ 編集部より ☆

 急に暖かくなってきました。「果物&健康NEWS」の200号が見えてきました。メルマガと読者を結ぶ新しい企画を200号に間に合わせたいと考えています。来週から新年度です。新入生や新社会人の皆さんがんばってください。果物も忘れないでくださいね。(tnk)

 週の頭に桜が咲き始めたな〜と思っていたら、あっという間に満開。今年は暖かい日が続いているせいか咲いている期間がすごく短く感じます。咲いている期間が短いからこそ、桜が咲くとうれしくなりますよね。果物は店頭に置かれる期間がどんどん長くなっていますが、果物の魅力の1つである旬の時期が感じにくくなってしまうのはちょっと寂しいですね。(KT)




 果物&健康NEWS ご愛読に感謝申し上げます。

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 ご協力に感謝いたします。  編集長 敬白

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